教育委員選挙:最後のお願い(S27.10.4岩手日報)

昭和27年の秋、岩手の町や村では教育委員の選挙が行われていた。
今では考えにくいが、当時は教育委員も公選制で、「先生を選ぶ人を選ぶ」時代である。翌日に投票を控え、候補者たちは「最後のお願い」に駆け回っていた。

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だがその光景は、いささかカオスだった。
ある村では、「誰が出るのか」と見ていた有力者が、あまりに頼りない顔ぶれだったので自分で立候補してしまう。
別の地区では、「共産党員が出る」と聞いて、それを落とすためだけに立候補した人もいる。
さらに、「あの村のボスが気に入らないから」と、対抗心で出馬した候補もいたという。

理念も政策もあったものではない。
村の有力者同士の意地と人間関係のしがらみが入り乱れ、「教育の独立」どころか、まるで村の勢力争いの延長のようだった。

戦後民主主義の理想と、地方社会の現実。
教育委員選挙という制度が、やがて廃止されていったのも、この混沌の中にその理由を見出せるのかもしれない。


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