一ノ関駅の夏の営業成績は旅客が低調、貨物が好調(S28.9.4岩手日日)

昭和28年の夏――戦後復興も本格化しつつあるこの時期、岩手県南の交通の要衝・一ノ関駅では、旅客数は前年より微増したものの、期待されたほどの賑わいには至らなかったようだ。

7月から8月にかけての乗降客数は以下の通りとなっていた:

  • 7月
    • 乗車:123,550人(前年115,127人)
    • 降車:120,503人(前年111,763人)
    • 収入:577,739円
  • 8月
    • 乗車:157,316人(前年148,000人)
    • 降車:147,009人(前年137,006人)
    • 収入:8,014,481円

旅客収入については、8月に突出して高い金額が記録されているが、その背景には8月1日の花火大会や8月15〜16日の七夕祭りなど地域の大規模なイベントがあったと分析されている。とくにこれらの行事では、一日で30万円もの収入を記録した日もあったという。

一方、9月の収入目標は6,044,060円とされ、日平均で201,600円を想定していた。これは夏の行楽シーズン明けとしては高めの目標である。

旅客に比べて好調だったのが貨物の分野である。

  • 発送車両:30両
  • 到着車両:33両
  • 大船渡線扱い:254両
  • 収入:2,530,000円(目標1,770,000円に対し超過達成)

一ノ関駅の貨物は、発送品目に製紙、木炭、亜炭などがあり、到着品にはパルプ、酒類が含まれていた。盛岡鉄道管理局管内においても、第4〜5位に位置づけられるという堅調ぶりだった。

旅客の動きはやや控えめだったものの、地域経済を支える貨物輸送は順調に推移していた昭和28年の夏――一ノ関駅の姿は、戦後の地方都市が直面していた課題と希望を映し出しているかのようだ。


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