大槌町消防団常備部が消防団に昇格か(S42.11.2岩手東海新聞)
1967年11月2日
2025年7月28日
(昭和42年11月2日 岩手東海新聞より)
昭和42年当時、大槌町における防災体制に関して、大きな転換点を迎えようとしていた。町内の消防を担ってきた「消防団常備部」が、設置以来すでに10年余りを経過しており、制度の見直しとともに「消防署」への昇格が検討され始めていたのである。
この常備部は、町の厚生課が所管する形で運営されており、所属する職員には公務員法が適用されて、町職員としての待遇が与えられていた。しかしながら、実際の指揮命令系統はあくまで消防団に属しており、「行政組織としては厚生課、指揮命令系統は消防団」という二重構造によって、実務面でのちぐはぐさが指摘されていた。
このような制度の不備に対し、消防署という明確な組織体への昇格が望まれるようになっていた。記事では、「町民生活の変化に応じて、町独自の防災体制を強化する必要がある」といった声が紹介されており、防災の重要性が増す中での体制整備が課題とされていたことがうかがえる。
しかし一方で、大槌町における火災発生件数は年間わずか2〜3件と非常に少なく、「消防署昇格を急ぐ必要はない」とする慎重な意見も少なくなかった。必要性の有無を巡っては町内でも議論が分かれていたようだ。
なお、記事に掲載された写真には、当時の大槌町消防団常備部の建物が写っており、庁舎前には消防車とワゴン車が整然と並んでいる。当時としては近代的な施設でありながらも、制度上のあいまいさが課題として残っていたのである。
制度と現実のはざまで、町の防災体制は今、ひとつの転機を迎えていた。