釜石のボーナス商戦(S42.11.24岩手東海新聞)

昭和42年11月24日の岩手東海新聞には、企業城下町として栄えた釜石の“年末商戦”の熱気が伝わってくる。中心にあったのは、もちろん冬のボーナスだ。

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当時の岩手銀行の調べによれば、国や県の機関を含めた県内全体の冬季ボーナス支給額は 121億円規模になるのではないかと見込まれていた。そのうち釜石市内だけでも、どう少なく見積もっても 10億円 は支給されるだろうという。企業城下町としての釜石製鉄所の存在感が、そのまま地域の購買力として街に現れていた。

商店街はもちろん、この“10億円の波”を逃すまいと準備に余念がない。冬の需要を見越し、暖房用具や寝具といった季節物は確実に売れると予想されていた。また、当時伸びつつあったレジャー用品や家電製品も有望視されており、家庭の暮らしをワンランク引き上げる商品に期待が集まっていた。衣料品については「高級品がよく動くだろう」との見立てもあったというから、住民の生活にある程度の余裕が生まれていたこともうかがえる。

製鉄所の景気が街に直結していた頃の釜石。ボーナスの行方を見守りながら、商店街が活気づいていく様子は、まさに高度経済成長期の地方都市の象徴のようでもある。昭和の街に漂う、あの“年末ならではの空気”が紙面からよみがえるようだ。


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