イチジク浣腸は1円50銭(S3.9.1岩手日報)

昭和3年9月1日の岩手日報より。

広告欄に掲載されているのは、当時まだ新興企業だった「東京軽便浣腸製造所」による製品、「イチジク印軽便浣腸」。着物姿の母親が子どもに浣腸を施す印象的な図柄が目を引く。

この「イチジク浣腸」は、1925年(大正14年)に医師・田村廿三郎によって製造が開始されたもので、翌年には合資会社化され、田村が初代社長に就任。まだ創業間もない企業ではあったが、昭和初期にはすでに全国的な広告展開を行っていたことが、この新聞広告からも分かる。

広告に記された価格は以下の通り。

  • 大人用 10個入 1円50銭
  • 小児用 10個入 1円20銭
  • 大人用 5個入 80銭
  • 小児用 5個入 65銭

「便通のない時」「熱のある時」などの用途が明記されており、当時の家庭における常備薬としての位置づけがうかがえる。現在の「イチジク形」の浣腸器の原型も、すでにこの時期に確立されていた。

まだ医療へのアクセスが限られていた昭和初期、こうした使いやすさと即効性をうたう市販薬は、都市部はもちろん、地方の家庭にも重宝されたのだろう。創業間もない製薬会社が、こうして新聞紙上で存在感を示していたこと自体が、当時の医薬品市場の活気を物語っている。

 


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