大槌町の船員突き落とし事件(S28.2.25)

昭和28年2月25日未明、岩手県上閉伊郡大槌町で妙法丸の船員が船から呼び出され、数人の男に暴行を受けた後、高さ40メートルの崖から突き落とされた。被害者は崖中腹の松の枝に引っかかり、その後砂地に落下して重傷を負いながらも命を取り留めた。捜査は大槌地区警察署が担当したが、被害者の証言が得られない上、密漁事件や寄付金問題により署幹部の異動が相次いだことで迷宮入りが懸念された。しかし、新署長の指揮による再捜査で事件は解決に向かった。

犯行に及んだ容疑者たちは、以前から複数の事件に関与していた。その一つが、同じ部落で発生した女性への集団暴行事件である。この事件では、被害者の船員が女性を容疑者たちに引き合わせる役割を担ったとされる。しかし、事件後に容疑者たちは被害者がこのことを他人に話すのではないかと疑いを抱き、口封じを図る動機を持った。

また、宮古市でのレコード盗難事件も関連していた。この事件では、漁船修理のため宮古市を訪れた際、容疑者の一人が三井造船倉庫からレコード3,000枚を盗むよう船員に指示したが、船員はこれを拒否。その結果、容疑者が直接盗みを実行したものの、船員が事件を暴露するのではないかと恐れ、さらに殺意を抱く要因となった。

昭和29年5月、被害者が再捜査の熱意に応じて証言を改め、犯行の詳細が明らかになった。容疑者たちは地元や出稼ぎ先で逮捕され、全員が犯行を自供したことで事件は解決した。これにより、長らく混乱していた捜査がついに終結し、犯行の背景にあった一連の事件も解明された。


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