田老鉱山にも公害問題でダム建造計画(S42.12.25岩手日報)
1967年12月25日
2025年7月28日
昭和42年、岩手県の田老町(現・宮古市)に位置するラサ工業田老鉱山では、銅、マンガン、亜鉛などの金属鉱石が盛んに採掘されていた。しかし、鉱石の選鉱工程で発生する黒い鉱滓(こうさい)が、鉱山下流の長内川を汚染するという深刻な問題を引き起こしていた。
この廃液は長内川を経て、最下流部の乙部地区や海岸の漁場へと流出し、農作物や養殖アワビなどに被害を与えていたという。年間にして約300万円もの補償が必要な事態にまで発展していた。
この状況を受けて、ラサ工業では鉱山からおよそ4km下流の乙部地区に「ロックヒルダム」と呼ばれる構造物を建設することを決定。黒い鉱滓を食い止めるための巨大なダムであり、完成すれば長内川の水質改善が期待される。
当時としては先進的な取り組みであり、地域の防災や環境保全の観点からも注目を集めていた。このロックヒルダムの建設によって、長年にわたり黒く濁っていた川が再び清らかな水をたたえる日が来ることが、地元住民の希望となった。
鉱山と共に生きる町が、自然との共生を模索しはじめた昭和の一場面である。