すべての自動車に赤と青の信号を(S3.9.5岩手日報)

昭和3年9月5日の『岩手日報』より。

この頃、岩手県内では自動車の数が急速に増加していた。しかし、当時の自動車には方向指示器がなく、交差点などで右左折する際には、運転手や助手が手を使って合図を送る、いわば「手信号」によって意思表示をしていた。昼間であればそれでも問題は少なかったが、夜間になると当然ながらその手信号は視認しづらく、事故の原因にもなりかねなかった。

ちょうどこの年、陸軍の大演習が行われることもあり、夜間の交通安全が特に重要視された。そのため、岩手県警察部では、県内すべての自動車に対し、夜間でも進行方向が分かるよう、赤と青の灯火を用いた方向表示器を取り付けさせる方針を定めた。

この方向表示器は、仙台鉄道局の技師によって考案されたもので、赤の灯火は左方向、青の灯火は右方向への進行を示す仕組みである。特に夜間にカーブに差し掛かる際などには、進行方向が一目で分かるため、後続車にも分かりやすく、事故防止に大きな効果が期待されていた。

まずは市民への周知が必要ということで、盛岡警察署ではこの新たな取り組みに関するビラを配布し、理解と協力を呼びかけることにしたという。


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