江刺の県南バスターミナルに食堂が開業(S37.1.12岩手民声新聞)
1962年1月12日
2026年1月12日
昭和37年1月12日の岩手民声新聞を開くと、当時の江刺市の活気ある日常を切り取ったような、一枚の広告が目を引きます。鉄道が通っていない江刺市において、岩手県南バスのバスターミナルは単なる停留所ではなく、街の玄関口であり、人々の生活が交差するもっとも重要な拠点でした。
広告に掲載されているのは、そのターミナル内に誕生した県南バスターミナル食堂の案内です。開店を知らせる文字の横には、発車5分前!お気軽にどうぞという威勢のいいコピーが添えられています。バスが到着し、また次の目的地へと出発していく慌ただしい時間の合間に、温かい食事で一息ついてほしいという店側の心意気が伝わってくるようです。
写真の中の店内を眺めると、整然と並ぶパイプ椅子や長いテーブル、そして壁にずらりと貼られたメニュー札が、昭和30年代特有のモダンで質実剛健な雰囲気を醸し出しています。のちに岩手交通江刺営業所となるこの場所は、学生や仕事帰りの大人たち、そして大きな荷物を抱えて近隣の村々へ帰る人々にとって、旅の始まりと終わりを象徴する場所だったに違いありません。
鉄道がないからこそ、バスが街の主役であり、そこにある食堂はまさに市民の広場でした。排気ガスの匂いと、食堂から漂う出汁の香りが混ざり合う、活気に満ちた当時の光景が目に浮かぶようです。この一枚の広告は、時代の変遷とともに姿を変えていった江刺の交通史を語る上で、なくてはならない貴重な記憶の一片と言えるでしょう。
