盛岡・驚かせるつもりが殺人に(S42.5.13)
昭和42年5月12日午後3時頃、岩手県盛岡市三戸町に住む17歳の少年は、職場である麻雀クラブへ向かいました。この少年は宮古市から盛岡に移り住み、同棲していた女性と三戸町のアパートで暮らしていました。その日は給料日であり、7,000円を受け取って午後11時過ぎまで働き、仕事終わりに職場で酒を飲んで酔った状態で帰宅しました。
13日午前0時頃、自宅に戻った少年は、同棲相手が家を出て行ったことを知らせる置き手紙を発見しました。手紙には、少年が持ち歩いていた短刀が怖く、一緒に暮らせないと書かれていました。動揺した少年は短刀を手放そうと決意し、以前からその短刀を欲しがっていた友人に渡すことを考えました。気持ちを落ち着けるためにウイスキーを飲んだ後、短刀を手にして友人が住む岩手医科大学病院近くのアパートへ向かいました。
深夜1時30分頃、盛岡市本町通二丁目にあるアパートに到着した少年は、友人の部屋を正確に覚えておらず、二階に上がり誤って隣室のドアをノックしました。応対した女性に「間違いました」と言って謝罪し、次に隣の部屋のドアを開けました。少年は酒に酔い、短刀を見せて友人を驚かせようとしたところ、部屋の中にいた女性が声を上げたため、焦って脅すような言葉を口にしました。女性は驚いて短刀にしがみついて抵抗し、悲鳴を上げました。
悲鳴を聞いて隣室の男性が飛び起きて少年を追いかけました。少年は短刀を持ったまま階段を下りて逃げましたが、追いかけてきた男性が追いついた際、振り向いた勢いで短刀が男性の腹部に刺さりました。少年はその場から逃走し、自宅に戻って短刀を押入れの天井裏に隠しました。
被害者の男女は近くの病院に搬送されましたが、男性は腹部の傷が原因で19日に死亡しました。警察は事件発生直後から捜査を開始しましたが、動機が不明で捜査は難航しました。最終的に少年が不良グループと関係していることが判明し、捜査の結果、押収された短刀から血液反応が確認されました。少年は取り調べの末、友人の部屋を間違えて侵入し、偶発的に犯行に及んだことを認めました。
昭和43年1月、少年には懲役4年から7年の刑が言い渡されました。