釜石の製鉄所社宅も立冬で干し大根がズラリ(S42.11.8岩手東海新聞)
1967年11月2日
2025年7月28日
昭和42年11月8日の岩手東海新聞には、立冬を迎えた釜石の季節風景が紹介されています。この年の立冬はまさにこの日であり、暦の上では冬の始まり。紙面には、釜石市内の製鉄所社宅の様子を写した写真が掲載されており、ベランダには干し大根がずらりと吊るされ、いよいよ冬支度が本格化している様子が伝えられています。
写真に写るのは中妻団地と思われる鉄筋3階建ての集合住宅。各戸のベランダには家々が干した洗濯物や、大根、漬物用の桶などが所狭しと並び、当時の暮らしぶりを生々しく物語っています。家庭ごとに干し方や本数が異なり、それぞれの工夫や冬への備えがうかがえます。
記事中の一句「大根がぶら下がると冬」は、この時期の釜石ならではの季語ともいえる風景を端的に表しています。冷たい海風に揺れる大根の列が、季節の移ろいを視覚的に知らせてくれるのです。
このような社宅の光景は、当時の釜石が誇る鉄鋼都市としての活況と、それを支えた労働者と家族の生活感を今に伝える貴重な記録です。干し大根のある風景には、手間を惜しまぬ日々の暮らしと、冬を迎える家族の知恵と温かさが宿っていました。