岩手で初のタクシー強盗(S34.9.16)
昭和34年9月16日、岩手県盛岡市でタクシー運転手が殺害される事件が発生しました。午前1時ごろ、盛岡市大通二丁目のタクシー会社本社の無線機から異常音が流れ、会社が確認を指示しましたが、1台だけ応答がありませんでした。捜索の結果、盛岡市外山岸第一地割、県道小本線(通称・庄ケ畑)付近でタクシーが発見され、運転手が血まみれの状態で倒れているのが見つかりました。運転手は病院へ搬送される途中で死亡が確認されました。首や胸に複数の刺し傷があり、鋭利な刃物による攻撃が原因とされました。
警察は直ちに捜査を開始し、盛岡市大通の飲食店街や庄ケ畑周辺で聞き込みを行いましたが、当初は有力な手がかりが得られませんでした。しかし同日夜、盛岡市浅岸付近の住民から「犯人と思われる2人が新庄中津川折戸地内の山小屋に潜伏している」との情報提供がありました。この知らせを受け、警察は盛岡保線区の協力を得て、モーターカー(線路上を走行する小型の車両)を利用して現場に急行しました。モーターカーは盛岡市上盛岡駅南側の踏切付近から出発し、浅岸駅まで到着。その後、情報提供者や地元住民の案内で山小屋まで徒歩で向かいました。
山小屋に到着した警察は二手に分かれ、一方は山小屋の周囲を警戒、もう一方が建物内に突入しました。犯人と思われる2人は寝ているところを発見され、職務質問に対し観念して犯行を認めました。その場で逮捕され、モーターカーで上盛岡駅へ護送され、最終的に盛岡警察署へ連行されました。
逮捕された2人は、事件当日、盛岡市内の八幡宮祭の見物中に偶然再会し、飲酒後にタクシーを狙った強盗を計画。日影門付近でタクシーに乗車し、庄ケ畑に向かう途中で運転手を脅迫しましたが、抵抗されたため刃物で刺して殺害したと供述しました。犯行後、浅岸付近の知人を頼りましたが、その不審な挙動が通報につながりました。
裁判では2人に無期懲役の判決が言い渡されましたが、その後服役中に脱走事件を起こし、再逮捕されています。この事件は、警察がモーターカーを用いるなど迅速かつ効率的な手段を取ったこと、地域住民の協力を得たことで、わずか12時間余りで解決しました。