川井と花巻で自動車事故(S4.9.5岩手日報)
1929年9月5日
2025年7月31日
昭和4年(1929年)9月3日、小国村で行われた早池峰神社の祭典に関連し、2件の自動車事故が報じられました。
ひとつは、小国村と江繋村の境界付近で発生した事故です。参詣者を満載したトラックに乗っていた34歳の男性が、酒に酔った勢いで走行中に突然車外へ飛び降りました。ちょうど後続していた車の進路に滑り込むようなかたちとなり、そのまま轢かれて命を落とすという、痛ましい出来事でした。
祝祭の賑わいと酒気がもたらしたこの悲劇は、昭和初期という自動車普及期ならではの、交通社会の未熟さを象徴していると言えるかもしれません。
同じ日、稗貫郡花巻町でも事故が発生しています。
こちらは、盛岡市内の自動車販売店が「フォード車」の性能試験を市内で行っていた際、試験走行中の車両が不意に少年に接触し、怪我を負わせたというもの。被害にあったのは、上閉伊郡宮守村から来ていた少年で、幸いにも命に別状はありませんでした。
しかし、自動車の性能を見極めるはずの試験中に、無関係の通行人が巻き込まれるという事実は、当時の安全対策の不備を浮き彫りにしています。
昭和初期、地方にも自動車が本格的に入り始めた時代。人々はその利便性に期待を寄せる一方で、こうした「予期せぬ死傷事故」もまた各地で起こっていました。交通社会の整備と意識の改革が、まさに問われていた時代だったのです。