函館で不敬事件発生。内容は極秘(S5.3.1岩手日報)

昭和5年3月1日の岩手日報によれば、函館市で不敬事件が発生し、関係者が拘束された。

事件は、函館地方裁判所の令状に基づき、潮見刑務所支所で取調べが行われたとされているが、その内容は「極秘」とされており、一切が伏せられている。罪名として「不敬罪」が示されているのみで、具体的にどのような発言や行動が問題視されたのかは不明のままである。

このように、報道が事件の存在だけを伝え、その核心には一切触れないという構図は、当時の情報統制の厳しさを物語る。「不敬」に関わることは、それ自体がタブーであり、新聞も慎重に言葉を選びながら報じざるを得なかった。

興味深いのは、このような北海道・函館での事件が、遠く離れた岩手の地方紙でも取り上げられているという点である。内容も分からず、詳細も伏せられていながら、それでも「不敬罪で誰かが捕まった」という事実だけが伝えられる。その報道の仕方自体が、当時の空気や時代相を如実に物語っているようでもあり、同時にどこか不可解でもある。

国民全体が「不敬」という言葉に過敏に反応するよう教育され、報道機関もまたその枠組みから逃れられなかった時代。そんな空気が、わずか数行の記事の中にも静かに滲んでいる。

 

 


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