盛岡・メガネの水晶堂「メガネはスイスコーティングで!」(S42.12.30岩手日報)

昭和42年12月30日の岩手日報より。

昭和42年の年の瀬、盛岡市中の橋通にある眼鏡専門店「水晶堂」が岩手日報に出した新聞広告は、視力と快適さへの意識が高まっていた時代の空気を感じさせてくれます。

広告は「スイスコーティング」の技術を大々的に紹介しており、「あなたのメガネをサングラスにします」「現在ご使用中のレンズにもコートできます」と、既存のレンズにカラーコートを施す新技術を売りにしていました。ホワイトコートが1000円、カラ―コートが1500円という価格表示も、当時としては挑戦的だったかもしれません。

注目すべきは、広告に登場する人物です。堂々と眼鏡をかけて写っているのは、ジャーナリストで放送タレントとしても知られた渡辺紳一郎氏。NHKラジオの人気クイズ番組『話の泉』で「物知り博士」として一世を風靡した彼は、新聞社の海外支局長を歴任した国際派でもあり、昭和の教養人を象徴する存在でした。

広告中の言葉「ルミーコートレンズに変えたら50年目に世の中が明るく見えだしたんです」は、当時67歳の渡辺氏が実際に発したとされるコメントです。知的な眼鏡ユーザーとして、商品の説得力を高める存在だったことは言うまでもありません。

さらに特筆すべきは、この水晶堂が令和7年現在も中の橋通りで営業を続けているという事実です。広告に記された「この標識が目じるしです」という眼鏡マークは、今なお市民の記憶に残っているかもしれません。

時代が変わっても、目を大切にしようというメッセージは変わらない。そんなことを静かに語りかけてくる、昭和の一枚です。半世紀を超えて街に根を張る店と、それを支えてきた人々の姿が、広告の行間から浮かび上がってきます。

 


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