宮古随一の豪邸「対鏡閣」が身売り(S4.9.1岩手日報)

昭和4年(1929年)9月1日の岩手日報に、宮古町の名邸「対鏡閣(たいきょうかく)」が身売りされるという報が掲載されました。

この「対鏡閣」は、山田線の建設や宮古港の整備などに尽力した下閉伊郡屈指の富豪・菊池長右衛門氏の別邸として知られています。特に注目すべきは、この邸宅が「平民宰相」こと原敬首相を迎えるために、巨費を投じて建てられたという由来です。

記事によれば、昭和4年8月28日、宮古区裁判所の登記所において、対鏡閣の宅地約2,500坪、さらに附属山林約2,400坪の売買手続きが行われました。購入したのは、宮古市鍬ケ崎で一流料亭として名を馳せていた「長岡屋」という料亭です。

この豪奢な建物は、昭和11年にはラサ工業の電線敷設のため、磯鶏(そけい)の方角へと移築されることになります。戦後には、米軍による接収・慰安所として使われたという証言も残されています。その後の消息については、はっきりとはわかっていません。

現存していれば、近代宮古の繁栄と政財界の交流を象徴する建築遺産として、貴重な存在となっていたことでしょう。


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