金ヶ崎にも特設電話が開通・電話番号(S元.12.26岩手日報)

昭和元年12月26日付の『岩手日報』には、胆沢郡金ヶ崎町に特設電話局が開局した旨が掲載されている。これは同日付で報じられた「台温泉に特設電話局が開局」と並ぶ報道であり、昭和改元直後の岩手県内における通信インフラ整備の動きを示す貴重な記録である。

「特設電話局」は、明治35年から昭和7年まで設置が認められていた制度で、国の計画による電話局設置が後回しにされた地域に対し、地元住民や自治体の費用負担を条件に電話局の開局を可能としたものである。逓信省の監督下に置かれ、一般の電話局と同様に市外通話も含めた電話交換業務を担っていた。

金ヶ崎町の特設電話局には、町役場、郵便局、警察派出所、医院、商店、運送業者などが加入しており、地域の主要な公共機関や事業者の名が並ぶ。電話番号は二桁から三桁で構成され、すべて手動交換式であった。

当時、電話はもちろんダイヤル式ではなく、交換手が通話先を接続する仕組みで、市外通話も交換手を通じて利用できた。ただし、市外接続回線の本数が限られていたため、混雑時には接続待ちや時間制限が生じることもあった。また、料金も高額であったため、実際には町内通話が中心になりやすいという現実もあったが、制度上は広域通話にも対応していた。

このように、金ヶ崎における特設電話局の開局は、地方における通信環境の改善と近代化の波の到来を象徴する出来事であり、昭和初頭の地域社会を知る上で貴重な手がかりを提供している。

特設電話局制度の詳細については、同日の「台温泉に電話局が開局(昭和元年12月26日付)」の記事も併せて参照されたい。

 

 

 


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