水沢の婦女暴行殺人(S35.1.13)

昭和35年1月13日未明、岩手県水沢市で発生した事件は、午前0時30分ごろ、タクシー運転手が鉄道線路近くで男性が女性を抱えて運ぶ姿を目撃したことから発覚した。運転手は同僚たちとともに現場に向かうが、男性に「邪魔する気か、あっちへ行け」と脅され、一度退却。その後再び現場に戻った際、川辺で倒れている女性を発見し、病院へ搬送した。女性は意識を取り戻すことなく午前3時30分に死亡した。

警察は直ちに捜査本部を設置し、事件現場での捜索を開始。現場付近では「電気」と書かれた手帳が発見され、この手帳が重要な手掛かりとなった。また、被害者の身元は勤務先の病院での確認により、水沢市内に住む26歳の看護師であることが判明した。彼女は夜勤に向かう途中で襲われたと推定された。

解剖の結果、死因は肝臓破裂による大量出血で、左肋骨の骨折や首の圧迫痕が認められた。また、現場近くには足跡や争った形跡が残っており、捜査員はこの手帳をもとに犯人の特定を進めた。手帳には「大阪テレビ放送株式会社」に関連する記載があり、大阪府警や地元の電気業者に照会を行った結果、容疑者として地元出身の無職男性が浮上した。

この男性は事件当夜、飲み歩いていたことが確認されており、自宅の捜索で被害者の所持品である手提げ袋や弁当箱、化粧品が発見された。取り調べの中で当初は犯行を否認していたが、説得を受けた後に自供。彼は事件当夜、被害者に声をかけ、逃げようとした彼女を襲い、暴行後にその場を逃走したと述べた。また、犯行中に現場に手帳を落としたことを認めた。

裁判では強姦致死罪に問われ、懲役10年の判決が下された。事件は目撃証言や物証が揃っていたものの、被疑者の自供が事件解決の決め手となった。また、この事件を通じて、救助活動時の慎重な対応の重要性も改めて認識された。


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